加藤諦三 「心の重荷の降ろしかた」感想

心の重荷の降ろしかたBOOK
加藤諦三 ホームページより

加藤諦三 「心の重荷の降ろしかた」

本の紹介です。

 紹介するのは早稲田大学名誉教授の 加藤諦三 氏の新作 「心の重荷の降ろしかた」 です。加藤さんは御年84歳の社会心理学者で哲学者です。ニッポン放送の「ラジオ人生相談」を50年以上に渡って続けている方です。takeは学生時代に知的生き方文庫の「自信」を読んで以来40年、読者です。
 ここでいう重荷とは親の期待であり満たされなかった抑圧された感情です。表現されなかったマイナスの感情の蓄積です。

 加藤氏の昔の著作に「愛されなかったときにどう生きるか」というのがありました。本作もこのテーマにそっていると思われます。

 幼少期に甘えが満たされなかった人は大人になってから周りにそれを求めます。当然、満たされません。
 幼少期に愛されなかった人は大人になってからは、その「母なるもの」を得ることは出来ません。そこで「母なるもの」がなくても成長できるための方法が書かれています。加藤氏は「不幸を受け入れること」と「苦悩能力の確立」ということを言っています。簡単にまとめてみました。

  • 自己実現

    人が心理的に「一人前の大人」になっていくには、「人に良く思ってもらうこと」から、「自己実現」に向かわなくてはいけないそうです。それには弱点を受け入れて、「私はこういう人間である」と宣言することでアイデンティティーが確立するといっています。
    自己実現とは青年期の課題であるアイデンティティーの確立(興味の覚醒)のことです。それには自分を知る必要があります。日々、「自分を満足させるものは何だろう」と考え、それを実行する人が劣等感を克服し、安らぎを得る。そうすると「自分の才能を表現したい」と思えるようになり、世界との繋がりができる。
    悩みを解決するには、周りから評価されることではなく、ありのままの自分になることが大切です。
    「私はこれがしたい。これが人生の魔法の杖だ」とシーベリーも言っています。

  • 不幸を受け入れる

    まずは自分の不幸を受け入れる事が必要です。それにより生きるエネルギーが生まれてくる。心の葛藤に直面し理解しようとすることの苦しみで、心の病の原因が取り除かれる。 
    「不幸を受け入れる」ということが、世に言う「悟りをひらく」ということ。
     人は「一次的な絆」(すべてを受け入れてもらえる幼児と母親との関係)から「二次的な絆」(大人同時の関係)への過程でよく躓きます。二次的な絆を形成するには「自己実現」しかない、「心理的な成長」をするしかない。

  • 素直に苦悩する

    「素直に苦悩する」とはヴィクトール・フランクル シーベリーの「不幸を受け入れる」と同じです。「苦悩能力の確立」こそ、人間の最も価値ある生き方です。
    人は退行欲求が満たされて、次に成長欲求を遂げていきます。しかし人は退行欲求があっても他人との「心の絆」があれば、退行欲求を抑えて「自由と成長」に向かえる。
    自我の確立はどこからスタートとするのか?それは母親との原始的なつながり(primary bond)を断つことからはじまる。そこから独立と自由へスタートする。人間の自立は、孤独への恐怖感との戦いからはじまる。
     
    「苦悩能力」のある人は、苦悩することの過程で、自分の人生の意味を見つける。苦悩することの中で、「自分の人生の意味を見つけること」が、最高の価値ある行為である。(フランクルの言う「苦悩能力の確立」)
    「共同体感情」の入り口は母親です。そこを「断念」することで、人生は切り開かれる。

  • 人生最大の価値は苦悩能力である

    人生最大の価値は苦悩能力である。幸福になれた人は、無意識の劣等感を他の人々と協力するということで克服できた人である。否定的な人たちから認めてもらいたいという気持ちがなくなれば、生きることは心身ともに楽になる。苦悩能力の確立こそが、人間最後の「心の砦」である。

 すいません。全然まとまっていません。

 しかし、簡単に言うと「素直に苦悩する」ことで「苦悩能力を確立」し、他人との「心の絆」ができて、退行欲求を抑えて「自由と成長」に向かえるという事ではないでしょうか。苦しいのは自分だけではないという事に気が付いた時に共同体感情ができ、自立へと向かうのではないでしょうか。自分の苦悩に気が付けば他人も苦悩していることに気が付くわけです。
 この本は心の荷物を降ろすには、まず荷物(不幸であり苦悩)を受け入れる必要があると言っているのではないでしょうか。本書の中にも書かれていますが、カルトに嵌る人はこれができないのでしょう。カルトの信者というのは自分が変わることを拒否した人たちではないでしょうか。そして教祖は「母なるもの」の代わりです。

 以上、参考になりましたでしょうか。

次の本も紹介しています。
加藤諦三 「 テレフォン人生相談 ー心の仮面をはずそうー」 感想
絶望から抜け出す心理学 心をひらく マインドフルネス な生き方 感想

コメント